夜中散歩
同じように育ったはずなのに、頭も良く素行も良い。
兄ばかりが贔屓される。
自然と、『出来損ない』の妹は後回しになる。
それはきっと当たり前のことだよね。
口には出さないだけで明確に分かること。

「じゃあお母さん、私そろそろ行くね」
満月が鞄を持つと、母も後をつけてきた。

これが最後の朝。
きっと、幸せで居られる最後の朝。
全てを見るのは、母。

残酷な真実だけど、真実は隠し通せない。

一番最初の目撃者を、母にさせる。
なんて親不孝な子供なんだろう。
謝る事は出来ない。
だから精一杯の笑顔で。

「気をつけてね」
と母が言えば、
「ありがとう」
私が笑って返す。

普通の朝、これが最後の。

覚悟は出来ているはず。
心がついてこないだけで。

出来るだけ普通にいつも通りの自分を装い、家を出た。



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