夜中散歩
「嘘・・・お兄ちゃんが、嘘・・・」
薄緑のカーペットに、何粒も何粒も涙が落ちて染みになる。
「ゆっくり聞いてね、満月ちゃんの気持ちも凄く分かるよ」
何度も何度も頷いて話に耳を傾ける。
兄が発見されたのは午前9時すぎ。
何度聞いても返事をしない兄を不思議に思った母が、鍵を開けたのだ。
首を吊った状態で見つかった兄。
それを見て母は何を思っただろう。
何を思って、どんな事を感じたんだろう。
「お兄さん、最近変わった様子とかなかった?」
「変わった様子・・・」
と呟いて、考えるように見せかける。
見抜かれちゃいけない。
裏の裏を読んで、冷静を保たなくちゃいけない。
そして何か思い出したかのように取り繕う。
「元気がないように見えました、良く分からないけど」
満月が発する一言一言をメモに書いていく早川。
何を書かれているんだろう、と思いつつ話を続けた。
「お兄ちゃんはすごく優しい人でした、勉強を教えてくれたりして、でも大学に行き始めてから一人暮らしを始めて・・・」
「じゃあ、なんで今日は家に居るの?」
「最近は、家に帰ってくるようになったんです、理由は・・・知りません」
そしてまたメモを取る。
本当に自分が言ったこと全部を、書かれているんだろうか。
「兄は自殺、したんですか?」
メモを取っていた早川が顔を上げる。
「まだ分からない、でも・・・」
「でも?」
その言葉の続きを問うけれど、笑顔でごまかされてしまった。
母を見ると、満月と同じように話を聞かされていた。
こんなに近くに居るのに、遠い。
自分の家に見知らぬ人が沢山集まっている。
兄は死んだんだ。
私が、殺したんだ。
薄緑のカーペットに、何粒も何粒も涙が落ちて染みになる。
「ゆっくり聞いてね、満月ちゃんの気持ちも凄く分かるよ」
何度も何度も頷いて話に耳を傾ける。
兄が発見されたのは午前9時すぎ。
何度聞いても返事をしない兄を不思議に思った母が、鍵を開けたのだ。
首を吊った状態で見つかった兄。
それを見て母は何を思っただろう。
何を思って、どんな事を感じたんだろう。
「お兄さん、最近変わった様子とかなかった?」
「変わった様子・・・」
と呟いて、考えるように見せかける。
見抜かれちゃいけない。
裏の裏を読んで、冷静を保たなくちゃいけない。
そして何か思い出したかのように取り繕う。
「元気がないように見えました、良く分からないけど」
満月が発する一言一言をメモに書いていく早川。
何を書かれているんだろう、と思いつつ話を続けた。
「お兄ちゃんはすごく優しい人でした、勉強を教えてくれたりして、でも大学に行き始めてから一人暮らしを始めて・・・」
「じゃあ、なんで今日は家に居るの?」
「最近は、家に帰ってくるようになったんです、理由は・・・知りません」
そしてまたメモを取る。
本当に自分が言ったこと全部を、書かれているんだろうか。
「兄は自殺、したんですか?」
メモを取っていた早川が顔を上げる。
「まだ分からない、でも・・・」
「でも?」
その言葉の続きを問うけれど、笑顔でごまかされてしまった。
母を見ると、満月と同じように話を聞かされていた。
こんなに近くに居るのに、遠い。
自分の家に見知らぬ人が沢山集まっている。
兄は死んだんだ。
私が、殺したんだ。