夜中散歩

拓はどうなる？
拓の家族はどうなる？
殺人者の家族として世間から白い目で見られるに違いない。
拓の将来に傷を付けるようなことはしてしまいたくない。
ここまで自分の考えが愚かだと思うと、後ろめたさも感じる。
やらなくちゃいけないことがある。
それが本心でなくたって。
隠さなくちゃいけないことがある。
誰かのために。
後ろめたくても、恥ずべきことであっても。

誰かの命に代えて、誰かを守る。
そんなの不条理すぎるかもしれないけど。
それでも、私は･･･。
それくらい、戻れないことをしてしまったんだから。
罪をひとつ犯したら、積み重ねなくてはいけなくなる。
分かってる。でも覚悟なんかはしていない。
本当は誰かに助けてほしい。
大丈夫だよって、笑ってほしい。
今までの事が、本当は全部全部嘘なんだって。
それが拓で居てほしかった。

これから待っている苦しみが違う。
憎しみが違う。
取り巻くものが違う。悲しみが違う。
将来、幸せを掴んだとしても、あの時の事を思い出せば、偽物に見えるだろう。

人が命を落とし、゛もの゛になるとき。
それを見てしまったんだから。
゛幸せ゛なんて求められない。

これからどうやって生きていくんだろう。
家族も居る。それなりに友達も居る。一人じゃない。
それを裏切ってしまうのか。
『人を殺した中学生』それが本当の自分。
けれど『どこにでも居る、ありふれた中学生』として、これから生きていく。

自分の罪が暴かれる日まで、ずっとずっと。

考えれば考える程、身震いがした。
自分のした事、重さ、残酷さ。
自分のした事は正しいと思った。

あんな奴、くたばって当然だって。
死んで当たり前だって、良かったって。
けど人間は人間だ。
人一人の人生を終わらせた。

怖くて怖くて、しょうがない。