夜中散歩
父の車に乗って二十分ほどすると、通夜が行われる会場に着いた。
父と母について行き中へ入ると、親戚が大勢集まっていた。
中には、私たちに会うなり涙を流す人、慰めの言葉をかける人。
色んな人が居た。

そんな景色を遠くで見て、やっと気がつく。

あぁ、兄は死んだんだ。
だから、泣いているんだ。
みんな、自殺だと思ってるんだ。

背徳感、笑ってしまうような感覚。

他の人が泣いている中で、自然と涙が出てきたのも事実だった。

そのほうが自然に見える気がして。

母は泣いている。
兄の名前をつぶやきながら。
父は涙を流さなかった。

じっと、目の前を見つめていた。


< 55 / 126 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop