夜中散歩
近くには真希の姿もあり視界に入った瞬間、唇を噛んだ。
父と真希さんの真実は、私の中にある。

自殺なんかじゃない。
苦しめてやりたい。
分かってないとでも思っているんだろうか。

遠くから父を見ていると、何度も真希さんの様子を窺っている事が分かる。
どうして今まで気づかなかったんだろう。
私が気付いていればよかったのに。

思っても、もう遅い。

兄は死んだんだ。真希さんの恋人の。

けれど真希さんは、父が好きだった。

そんな気持ちがなくても、兄にはそう見えたはず。

兄は知っていた。父が憎くて憎くてしょうがなかった。

分かってる全部。
何もかも。

父が私の何もかもを知っていたとしても、それが全てじゃない。





< 56 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop