夜中散歩
全部を知られたとき、その時きっと私は父を殺すんだろう。
怖くなんてない。
真実を知られたときを、何よりも恐れているから。

手にかけることくらい思ったより簡単なんだと思う。
人の命に重さなんてないよ。
望んでいるのかもしれない。心のどこかで。

母が居るのに、家族があるのに。
子供の彼女と、二人で出かける親なんて。
死んでしまえばいいと思っているのかもしれない。

否定は出来ない、こんな思い。

通夜が終わり、一人で居ると、真希さんが歩いてくる。
青ざめた顔をして、今にも倒れそうな出で立ちで。

「大丈夫ですか?」
歩み寄ると私の手を掴んでその場に座り込んでしまう。
泣きじゃくりながら真希さんの黒いスカートに涙が滲んでいく。
その様子を、私はただ見つめていた。

「ごめんね満月ちゃん」
真希さんは何度もそう呟いているけれど、何が「ごめんね」なのか分からない。
どうして謝るの?
全部は私が悪いのに。

どうしていいか分からずに、ただ真希さんの手を握っていると、父が慌てるようにしてこちらに向かってきた。
と同時に、真希のほうから離される手。

「満月」
父い引っ張られて腕に痛みが走った。


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