夜中散歩
「何を話してたんだ?」
何のこと?と聞き返すが、父は続きの言葉を濁す。
どうしてだか分からないけれど、真実を知ってしまうと、どんな言葉も行動も。
゛それらしく゛見えてしまう。

バツが悪そうな顔をして、何を隠しているんだろう。
何を見て何を思っているんだろう。
少し視線をずらせば、真希も父を見ている。
二人して、何を思っているの?

「用がないなら離してよ、うざいな」
掴んでいた腕を離し、歩き出す。

例えどんなリスクを背負っても、私には守らなくちゃいけないものがある。
普通の中学生には理解してもらえない内容を、形にしようと考えている。
理解なんていらない。

自分を信じてくれる人にしか、分かってくれる人にしか、理解なんてしてほしくない。
可哀想、なんていう同情もいらない。

私は私を信じてくれる人だけを信じる。
誰も信じたりしない。

欲しいのは実行力と決断力。
どうしても、やらなくてはいけないことがある。
真実は隠せない。隠し切れない。
黙っている証拠もない。
だったら、同じ悲劇を繰り返せばいい。


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