夜中散歩
「優哉を殺したのは、お前だろ?」

真実に、触れられた。
隠していたはずの真実が、目の前で吐かれた。
じゃあ私は、この人を・・・
決断ならもうしている。覚悟も決めている。

あとはそれを行動に移す、決断力。
もう無理にでも行動に移さなきゃいけない。

でも、こんな日に――――。

「だったら何?お兄ちゃんのこと殺したのはお父さんなんだから」

自然と顔が笑う。分かってる。
頭は体以上に冷め切っている。何かが切り替わっている。
善と悪が分からない。
どれが悪で、どれが善なのか。

兄が父のことで悩み、苦しんでいたのは間違いではない。

「でも優哉を殺したのは――――」

「私。だから何だって言うの?」

あまりに簡単に吐かれた真実に、呆然とする父。

そんな父をよそに、ポケットに手を伸ばす私。
守りたいもの。守らなくちゃいけないもの。
どちらも守りたかった。ただ、それだけ。


< 63 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop