夜中散歩
体が浮き、とっさに腕で顔を覆った。
小枝にぶつかりながらの、一瞬の出来事。
急降下する乗り物のような、けれどどこかに現実があった。
見たくもない、目を塞ぎたくなるような。

思うほどの痛みはなかった。
腕の至るところから血が出ていることぐらいで、大した痛みはなく。

足には着地して支えきれずに倒れてしまったときに出来たであろう、手のひらの傷ぐらい。
手についた土を払いその場から立とうとしたとき、足の付け根に激痛が走った。

それでも満月はそっと少しずつ歩き始めた。
次第に降り始める雨に打たれながら。




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