夜中散歩
外へ飛び出して、意味も分からないまま道を走った。
勿論、履いていたブーツではなく足に入ったブカブカのスニーカーで。
コートは、拓が持っている。
何百メートルか走ったところで、なぜか何もない平面の地で転んでしまう。
「・・・痛い」
右手が地面に着いたけれど、支えきれなくて顔のあごの辺りを擦りむいた。
最悪だ。

「大丈夫?」
やっと掴まれていた腕を離されて暗闇の中、手を差し出される。
そのまま立ち上がらないでいると、拓は携帯を開いて光を照らした。
「あご」
と言われて、あごを触ってみると激痛が走り、手を見てみると少しの血がついていた。
「・・・最低」
立ち上がって、ワンピースに着いた砂利をはらう。
「あー、もう・・・」
良く見てみると、ひざの辺りも擦りむいていた。

意味が分からない。
なんで意味も分からぬまま走らされて、転ばなくちゃいけないんだろう。
というかここはどこなんだろう?と思って振り返ってみる。
すると、手で『こっち来い』と合図される。
首を振ると、あごを触るしぐさをする。
首をかしげると、もう一度『こっち来い』と合図された。
言われたとおりに拓の居る場所に行くと、一言だけ「ごめんね」と言われた。

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