夜中散歩
ここでは女の子同士が仲が悪かったりとか、普通のお店にある派閥うんぬんがない。
ただ普通に女の子同士が仲が良く、私には居心地が良かった。
勿論、学校にここで働いていることを知られてしまったら、退学になるだろう。
高校に入ってこのお店で六店目なのも、知られそうになったら辞め、を繰り返していたから。
このお店で働き始めて四ヶ月が経つ。他のお店ではこんなに長続きしなかった。

少しずつ学んで、住んでいる場所からは遠くの店にしたけれど、いつバレるかなんて分からない。
常に気を張り詰めなきゃいけない状況に疲れるのも事実。
それでも私はこの仕事をしなくちゃいけない理由がある。

「そういえば由梨から聞いたんだけど、バースデーパーティー休むって本当?」
また煙草に火をつける。
吐き出される煙を手で払っていると、「ごめん」と小雪さんが違う方向を向いた。
「22時には店を出る予定です」
「へぇ、真希ちゃんが仕事すっぽかすなんて珍しいわね」
「すっぽかしはしないですよ」
笑いながら話していると、時計が19時を指すのが分かった。
「じゃ、行きましょ」
裾が汚れないように歩みを進めれば待ちくたびれたようにスタッフが居た。
「お願いします」
「分かってるって」
店を見渡せば、開店して少ししか経っていないというのに何組かお客さんが集まっていた。
私の名前を呼ぶ声。小雪さんの名前を呼ぶ声。

ポーチの中を確認しながら、席へと向かう。

「お待たせしました、真希です」

ここが私の、生きる場所。
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