夜中散歩
女の子たちが集まる部屋へと戻り、ロッカールームを開ける。
バッグからノートを取り出す。
少し分厚いノート。ここに自分がついたことのあるお客さんの情報が入っている。

寺田、寺島、渡月、渡月・・・
「あった」
決して綺麗ではないその文字を見ていると、書いてあることがあった。
【渡月さん xxxxxx@docomo.ne.jp
46歳 広告代理店勤務 2002年8月から】

8月。私が働き始めてからすぐだ。
会社の人たちと初めて来てから私を何度も指名していることが記されている。

この人が本当に拓の父親なら・・・

思いもよらぬ事態に呆然としていると、ドアが開いた。
「こんなとこで何してんの」
「由梨ちゃん」
急いでノートをしまい、由梨と話す。
飲みすぎているのか顔が赤い。

このキャバクラで働き始めたのも由梨の影響だった。
前の勤務先で知り合った四つ上の女の子、それが由梨。
そのお店で働き始めて1ヶ月でナンバーワンとなった私は、他の女の子から「客と寝ている」などの言葉を何度も吐かれた。
その言葉を言われる度かばってくれたのが由梨。
お金を稼ぐならもっと気楽に稼ぎたい。居心地が悪くなった私はその店を辞めてここに来た。
私が辞めるのを知って「じゃああたしも」と店を辞め、二人でここに働き始めたんだけど・・・
由梨になら全てを話してもいいかもしれない。

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