夜中散歩
店が終わるのは深夜2時。
いつものように店を出て、私達が向かった場所は駅前の喫茶店。
私が店に出れば毎日のようにここで話をしている。
学校の話から、仕事の話、愚痴もこぼれる。

「・・・そうだったんだ」
由梨が8杯目となるカシスオレンジを飲み終わった頃、話は終わった。
全ては話さなかった。昔の知り合いの父親が客だったってことだけ。
複雑な顔をしている。そりゃそうだよね。
キャバクラで働いていることさえ、利益ばかりではない。
楽してお金を稼げるならいい。自分で自分を売っていく。
自分に値段をつけられる。
幸せになんてなれない、私は一生。

人殺しの私。
人殺しの拓。
何も知らない、人殺しの父親。

交わってはいけない。

幸せになりたいって思ってたら駄目。
幸せになれるって思っても駄目。
あと一歩で幸せになれるのに、お兄ちゃんとお父さんの手がそれをさせない。
「お前だけ幸せにはさせない」
そんな言葉を、今にも言いそうな二人。

街の明かりが少しずつ消えていく。
真希の一日が終わった。

【2002.12.9
過去は消すことが出来ない、絶対に。】



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