夜中散歩
安っぽいシャンデリアが私を照らす。
煙草くさい、酒くさい。
あのオヤジ、アフターすっぽかしやがって。
絶対指名なんてしないでほしい。
16歳。
あ、店では18って言わなきゃだ。
いつになったら年を取るんだろう。あと少しで19か。
19に見えるのか?まだ18歳で居たいんだけど。

「死にたいけど、逝きたくない、みたいな。分かる?」
小雪さんの腕の傷を見てから、ずっとそのことを二人で話していた。
時に違うことを考えながら小雪さんはずっと話し続ける。
「仕事のときは舞台用のファンデーション塗ってるの、あ、東急ハンズに売ってるんだけど」
こんなに話す人だったっけ、この人。

「あたしばっかこんな喋っちゃってごめんね」
「あ、いえいえ」
オレンジジュースを飲み干す。
「あたしの弱味握られちゃったね。なんか真希ちゃんの弱味も教えてよ」
「え?」
「あ、でも真希ちゃんって人に弱味とか見せないほうだよね~、だから余計知りたくなるっていうか」
そう言われ考えるけど、何も思い浮かばない。
こんなこと言ったら小雪さん驚くかな。
「私、人殺しなんですよ」
わざといたずらっぽく言うと、小雪さんは今にもアイスティーを噴出しそうなニュアンスで言う。
「なにそれ。笑えないっつーの」
「本当ですよ」
なんて言っても、信じてくれるわけがない。
信じられたら信じられたでそれはびっくりなんだけど。
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