夜中散歩
映画が終わり、買い物をしながら映画の感想を話していた。
買い物をする時間が一番好きかもしれない。
「真希ちゃん、好きな映画は?」
「んー、最近だとリリィシュシュのすべてとか」
「じゃあ岩井俊二好き?」
「そういうわけじゃないけど」
「この後何する?」
「あ、うち来ますか?」
ニットワンピースを手に取った小雪さんの手が止まる。
嬉しそうな顔をして。
「本当に?いいの?」

前に、由梨から聞いたことがある。
小雪さんが毎日のように店に出勤するのは、父親の借金と前に付き合っていた彼氏が残した借金を払うためで。
人を信じやすい性格だから、騙されやすいなど・・・
そんなところも、私が似てるって思ってしまう場所。
自分のことよりも他人のことで苦労するタイプ。
踏み込みたいとは思わないけど、知りたいとは思う。

私が住むマンションは六本木駅から電車で10分ほどの場所にある。
小雪さんの車でマンションまで向かって、エレベーターで上がっていく。
「こんなとこに一人で住んでるの?家賃いくらぐらい?」
「普通のワンルームですよ、給料に無理のない程度で」
鍵を開けて中に入り、電気をつける。
「おじゃまします・・・って広くない?」
面倒でカーテンをつけていない部屋は、街の夜景が見える。
店の送りの車で真っ直ぐ帰って深夜三時過ぎ。
そこから、学校の準備だったりお風呂に入ったりしているとあっという間に午前五時にはなってしまう。
その頃には夜景も消え、私の一日が同時に終わる。

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