for you
早く、
早く、
拓也のところまで行かなきゃ。
廊下を走り抜けるあたし。
校舎にはあたしの足音だけが響いていて、誰もいないような錯覚を覚える。
ガラッと教室のドアを開いた。
息切れするのを必死で抑えながら教室を見渡す。
―――――いた。
拓也、残っててくれた。
夕日でオレンジ色に染まる教室。
そこにはたそがれたように校庭を見ている拓也の姿が。
そんな格好も様になってるよ。
という心の声があたしの中から聞こえる。
あたしはゆっくりと拓也に近づいた。