キミがいた証



部屋には時計の音だけが響くなか、お兄ちゃんが口を開いた。




「優斗さ、最期の最期まで真白の名前、読んでた。」




私はお兄ちゃんを見上げた。




「でさ、俺に言ったんだ…」




お兄ちゃんは窓の外を見た。




夕暮れが、温かい色をしていた。




「“真白にさ、生きろって言って…前に進めって。見守ってるから、幸せになれ。側にいるから”って。」




止まった涙が、また、溢れた。



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