二重世界
私はとにかく入口から逆方向へ向けて移動する事にした。


しばらく進むと前から、ズズズ……と何かを引きずる音がする。

私は警戒し、ゆっくりと歩く。


来た……


それは長い黒髪を地面まで垂らした、小さな女の子だった。
手には何かを持って、引きずっている。


「ちょ……だ……」


女の子は何か喋りながら近付いてくる。
そのとき私は、その子が何を持っているかがわかってしまった。


髪の毛を引っ張ってる。



生首……!



「ちょうだい……」


「嫌ぁああ!!」


私は女の子に背を向け、来た道を逆走した。しかし恐怖のあまり、足がもつれ、体勢を崩す。


「あ……早く立たなきゃ……!」


私はなんとか立ち上がり、壁にもたれかかりながら移動する。
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