二重世界
私は無我夢中で女の子を蹴飛ばした。
そして私はそのまま四つん這いで逃げる。


「怖い……、怖いよ亮ちゃん!」


女の子が私の正面に現れたため、出口方向の道が開かれたのだ。

とにかくこのまま進むしかない。私は恐怖にすくむ体をなんとか起き上げ、走り出した。


「何なの、この世界!あれ、まさか本物の幽霊……?」


それにしても広い。
いつになったら出口が見えるのか、皆目見当もつかない。



本当にここを出られるの……?



私にそんな疑念が浮かぶ。するとそのとき、シュルルルという音と共に、前から糸のような物が私の右足に絡みついた。


「あ!」


そして、私はズルズルと糸に引っ張られる。その糸はゴムのような弾力性と、粘着力を持っていた。


やがて前方に、糸を放った者の正体が明らかになる。



「な、何……」
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