二重世界
それは、人間の大きさ程ある、巨大な蜘蛛だった。その口から吐き出された糸が私を捕らえ、ゆっくりと自分の方へ引き寄せる。


「くっ……、やめてよ!!」


私は体を引きずられながらも、足に絡んだ糸を思い切り引き延ばした。



ブチィ!



「ちぎれた!」



と思ったのも束の間、次の瞬間、いくつもの糸が私に襲いかかってきた。
それは両腕に、太ももに、胴体に巻き付いてくる。


「きゃあああ!!」


そして再び私は体を這わせ、蜘蛛の口元へと引っ張られた。蜘蛛はその大きな口をガバッと開いた。


「だ、ダメ……、このままじゃ、あいつに食べられちゃう!」


しかし両腕を拘束され、全く自由の利かない私には、なすすべがない。


「私、このまま殺されちゃうの……?お母さん……、亮ちゃん……!」



ガシィ!!



「え!?」
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