二重世界
引っ張られる私の体を、誰かが掴まえた。



「うおおおっっ!!」



そしてそのまま、ブチブチッと糸を引きちぎる。
さらに私を抱き抱え、蜘蛛と逆方向に走り出した。


「逃げるぞ片瀬!!」


「……亮ちゃん!?」


それは確かに亮ちゃんだった。どういうわけか2次世界に、彼が入り込んで来たのだ。


「どうしてあなたが……?」


「理由は後だ!」


亮ちゃんは走りながら、私の両腕に絡みついた糸をほどく。分かれ道を曲がり、違うルートから私達は出口方向へ向かった。



シュルルル!!



「うわあっ!」


「あうっ!」


ドサッと私の体が投げ出される。ふと見上げると、蜘蛛の糸が亮ちゃんの首に巻き付いていた。

そして亮ちゃんはそのまま宙吊りのように持ち上げられる。


「亮ちゃん!!」
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