二重世界
「ぐうっ……!に、逃げろ片瀬……」


「だ、ダメだよ!」


私が近付こうとすると、亮ちゃんは必死にそれを制した。


「来るな!お前も捕まるぞ!早く逃げ……」



ベキィ!!



鈍い音がして、亮ちゃんから言葉が失われた。ガクッと頭を下げ、体はブラーンと力なく宙を揺れている。


「え……?亮ちゃん……?」


さっきの音は、亮ちゃんの首の骨が……折られた音だ……



「亮ちゃん!!嫌ぁぁあああ!!」



私は慟哭を抑えきれなかった。叫ばないと狂いそうだった。いや、おそらく、私は半ば狂っていたのだ。



私の中の最も太い柱が、音を立てて崩れていくのがはっきりとわかった。



もう………
私はダメだ…………



私を支えていた‘何か'が失われ、私は力なくその場に横たわった。
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