二重世界
‘心が死んだか、藤瀬ヒロミ'


私の意識がほぼ失われたとき、蜘蛛と亮ちゃんは姿を消した。
私はもちろん、それに気付いていない。


‘こいつは私の世界を彩るカラクリ人形として使ってやろう'


男の声……。
頭に直接入り込んでくるこの声は、この男の心の声だ。


「くくく、我ながら残酷なシナリオを描いたものだ」


私は意識の片隅で、声の主の近付く足音を聞いていた。多分、この2次世界を作り出した張本人だ。



シナリオ……。



シナリオ!?



‘よく見れば、このままカラクリ人形にするには惜しい体だな'





「この変態野郎……」





「何!?」



私は、顔を地面に埋めたまま言葉を吐いた。
体は全く動かしていない。


‘寝言か……?'


「寝言か……?」


さらにこの男の心の声を、私がそのまま口に出した。


‘今のはなんだ!?私は喋ってないはず……!'


男はそ~っと私に近付く。
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