二重世界
「ほら、立てるか?」


亮ちゃんが手を伸ばす。


「だ、大丈夫よ……あれ……?」


足がガクガクして立てない。安心したからか、さっきまでの出来事を一気に思い出し、今頃震えが来たのだ。


「やっぱりこうなんのか。……ほら、おぶされよ」


亮ちゃんは、スッと背中を向けてかがみ込む。


「ちょ、ちょっと待てば大丈夫だから!」


「ここでしばらく座り込むのかよ?恥ずかしくて仕方ねえよ。意地張んじゃねえ!」


(だって、亮ちゃんがおぶろうとしてるのは片瀬詩織なのよ?そんなの……やだ……)


しかし亮ちゃんの言ってる事ももっともだ。私は複雑な想いで、その背に覆い被さった。
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