二重世界
亮ちゃん、私頑張ったんだよ。少しくらい誉めて欲しいな……





「お前、すげえな……」





「……え?それって……」


私の心の声が?


「ああ、背中に当たるボリュームがな、その……そういや、お前、片瀬だもんな」



ん?
それって……



胸の大きさの事……!?
こ、こいつ……!


「わ、私のコンプレックスを……!悪かったわねえ!この変態!ドスケベ!!」


「お、おい、怒り方がおかしいだろ……!」


亮ちゃん、私、あなたに気付かれないっていう自信がないよ。
あなたの前だと、ついつい私を出してしまうから。

私は自分の存在が消えたとしても、亮ちゃんに気付いて欲しいのかもしれない。そっちの方が幸せだって思ってるのかも。

藤瀬ヒロミという真実を隠せば隠すほど、あなたの存在が大きくなっていくから。


いつしかその想いが、私の存在自体よりも大きくなってしまいそうで、胸が苦しいんだ……
< 114 / 265 >

この作品をシェア

pagetop