二重世界
「え!?急に言われても……えっと……」


亮ちゃんとのわだかまりは、なんとなく解消された気がする。

一緒にいたいけど、あまり近付き過ぎて存在に気付かれるのも怖い。


「明日は部活だから無理だ」


「ちぇっ、つまんねえの」


私はホッとしたような、少し残念なような複雑な気持ちになる。
もし部活がなかったら、亮ちゃんはなんて返事していたのだろう。


「残念でした!あたしと詩織の2人きりの時間は邪魔させないわよ」


香織は、おそらく亮ちゃんか私の答えを待ってから、南くんにそう言った。

香織と2人きりか。
それもなんだか危ない予感がするのは、気のせいだろうか。


貞操の危機が。。


私達は南くんと別れ、電車に乗り最寄りの駅に着いた。しばらく3人で談笑しながら歩く。


「藤堂の家ってほとんど詩織と一緒なんだ~」


香織はドリームランドの時よりもテンションを上げ、スキップしながら道を進んでいる。
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