二重世界
あの時の私は、何か吹っ切れていて、恐ろしく冷静だった。

どうすれば目の前の男に動揺を与えられるか、どう導けば男がルールを頭に鮮明に描くか、それを淡々と考えていたんだ。


ああなったら私、簡単に人を殺せるの?


自分が手をかけたわけじゃない。でも男が命を失ったのは、紛れもなく私の能力……。


あの男の子は、私が自分の父親の敵だと知ったら一生私を恨むだろうな。

だって、自分の父親が殺し屋なんてわかるはずもないし。


あの子は今、家族はいるんだろうか。前の私と同じ母子家庭?

それとも今の私と同じ、1人……?
まだ幼いのに?
どうして?





私が父親を殺したから……!?




「ごめん……ごめんなさい……!私、そんなつもりじゃ……なかったの」


私は体を震わせ、涙が止まらなくなった。



‘この人殺し!'



‘お前が父さんを殺したんだ!'



「違う……!私はそんな……」



‘お前が死ねば良かったんだ!'



‘お前なんて生き返らなきゃ良かったんだ!'




‘俺はお前を許さない!'
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