二重世界
「なっ!?」


男はそれを左腕でガードし、右手で香織の喉元を掴まえた。

そしてそのまま壁際に、香織を押し付ける。
香織は両手で男の右腕を握り、外そうとするが、ビクともせず首を締め付けられていく。


「ぐっ…、すごい力……」


「しょせんは女だな。貴様には片瀬詩織を始末してもらうぞ」


「詩織を……?なぜ……?あんた……何者な…の……?」


「私の目を見ろ三輪香織」


男の顔はぼんやりとぼやけたままだが、右目だけがはっきりと見え始め、香織はその目に引き込まれるように凝視する。


「何、こいつの目……?全て黒目……」


「いいか三輪香織。目覚めるとお前は片瀬詩織を絞殺するんだ」


「私は詩織を、絞殺……。はっ!?何言ってるの!?ダメだ、目を見ちゃ……」


しかしどういうわけか、目を逸らせない香織に対し、男は更に暗示を深めていく。
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