二重世界
「意識が……詩織……」


「そろそろ落ちそうだな」


香織の腕の力が薄れてくると、男は暗示が入り込んだ事を確信した。


「詩織を、殺……」


「くくく……」




「……すわけないでしょ!」



ドボォッ!




「ぐはっ!」


瞬間、香織の蹴りが、男のみぞおちに突き刺さった。


「ゴホッ、ゴホッ、はあ、はあ……、あたしは詩織を守る役目なんだから」


首の締め付けが外れた香織は、その場で咳き込み、膝をついた。


「貴様……!大した精神力だ。そんなにあの女が大事か?」


男は立ち上がり、再び香織に近付いてくる。


「当たり前じゃない!詩織は……あたしの大事な親友なのよ!」


「もっと痛め付ける必要があるな。心も体も起き上がれない程ズタズタにしてやろう。そして、その親友を自分の手で殺して絶望を味わえ」
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