二重世界
「こいつ許せない!でも、あたしじゃ勝てない……。くっ!」


香織は男に正面から突っ込み前蹴りを放つ。
男が横にかわした隙に、そのまま出口に向かって走り出した。


「今は逃げるしかない!」


出口に着いた香織は扉を開け、外に出る。


ドッ!


「あっ!」


しかし香織は何もない空間で、壁のような障害物に当たったように弾き返された。


「ど、どうして……?」


「残念だったな。移動出来るのは、この道場内に制限させてもらった」


香織を嘲笑いながら、ゆっくりと男がにじみよる。


「こいつを倒すしかないの?動き回って隙をつくしか……」


男は香織の動く方向を警戒しながら、真っ直ぐに歩いてくる。


「す、隙がない……。どこに動いても捕まる!?」


香織の経験がそう告げていた。どこに動いても、目の前の男に捕えられるイメージしか沸かない。
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