二重世界
「じゃあ、正面突破よ!」


香織はスピードをつけ、さっきと同じように前蹴りを放ち、正面から抜けようと試みる。


「芸がない!」


男は最小限の動きで横に身をかわし、香織の服を掴んだ。


「同じ手は使わないわ!」


しかし香織はクルッと体を反転させ、裏拳を男のこめかみに見舞う。




ガッ!




「よし、当たった……、あ!」




男のこめかみに香織の拳が触れた瞬間、男が香織の右手を掴んだのだ。


「なかなか機知に富んだ攻撃だったな。だが、右手はもらうぞ」


男は香織の右手の付け根あたりに、親指をめり込ませた。



「あううぅぅ!!」



香織の右手に電流のような衝撃が走る。


「右手は動くまい」


「ツ、ツボを突かれた……!くっ!」


しかし香織もすぐさま、がら空きになった男の右頭側に、回し蹴りを放つ。


「ぐっ!!」


香織の左足が男の側頭部を捉えた。しかし、またもや男はそのまま香織の足を掴まえた。

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