二重世界

「そういえば詩織、なんかうなされてたけど大丈夫かな」


香織は私の体に手を回し、優しく抱き締める。

香織には、少し年の離れた弟が2人いる。両親が働いていて帰りの遅い家庭において、香織は文句を言う事なく、弟達の面倒を見ていた。

香織が世話焼きだったり、リーダーシップを取る一面は、そういった家庭環境が影響しているのだろう。


「詩織、なんだかちょっと雰囲気変わった。気のせいかな？でも……、あんたが可愛い事には変わりないよ～！」


香織はスリスリと、寝ている私に顔をすり付ける。


「ん……香織……？もう朝……？」


私は寝惚けながら、寝言に近い言葉で香織に訪ねた。


「まだ2時過ぎ。起こしちゃってごめんね。寝てていいわよ。あ、でもこっち向いて寝てよ。詩織の顔見ながらあたしも寝るから」


「もう、香織……バカ……」


私は相変わらず半分寝た状態で、寝返りをうって体を反転させた。