二重世界

「ヒロミ！？」


亮二は藤瀬ヒロミの悲痛な叫びが聞こえた気がして、夜中に突然目が覚めた。


「夢か……？ヒロミがいるわけねえのにな。でも、本当に声が聞こえたような……」


亮二は少しの間考え込み、立ち上がった。


「散歩だよ、散歩」


散歩だと自分に言い聞かせ、亮二はなんとなく詩織の家の前を通る。


「電気ついてらあ。あいつら明日休みだからって夜更かししやがって。……ま、まあヒロミの声がしたからって、片瀬とは関係ねえよな」


そのとき、不意に亮二には詩織の叫び声が聞こえた。




「やめて……香織！」




「……？お、おい、まさか三輪のヤツ、本気で片瀬と‘そんな関係'に？やべえな、妙なところに通りかかっちまった。……帰って寝るか」


亮二がその場を去ろうとした時、窓に押し付けられる詩織の姿が見えた。

その姿はじゃれあっているようなものではない。香織が詩織の首を締めているような……