二重世界
いや、考えすぎか。
おそらくアオは組織に追われている身。

私なんかに構っているどころではないはず。
それに彼は暗殺を生業としていた人。そんな人が、私みたいな小娘を救おうなんて考えるわけない。

ただの偶然だろう。


「それより、今は香織を」


私は香織をそっとベッドに運ぼうとした。


「う……、詩織?あたし、何して……」


「あ、香織起きた?寝惚けてベッドから落ちたのよ」


香織は部屋を見回す。
掛け布団は下に落ち、机の上にあった物も散乱している。


「なんでこんな……。え!?詩織、あんた首の回り、どうしたの!?」


私にはわからなかったが、香織に絞められた私の首には、手形の跡がついていたようだ。


「え?な、なんでもないわ……」


「嘘!なんかあったんでしょ!?……あれ、あたし、手に力が?」


香織は自分の体に異変を感じていた。私の首を絞めるため、力を入れ続けていた手がフルフルと震えていたのだ。
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