二重世界
しかしそのとき、私、つまり片瀬詩織は香織の下に歩いていき、声を掛けた。


「香織、私がいるから泣かないで。私ね、香織の事大好き。ママと同じくらい好き。私がいつも一緒にいたげるからね」


「詩織……。ありがとう。でも、あたし泣いてないよ」


「今泣いてるよ」


優しい。これが片瀬詩織なんだ。
でもなんだろう?
片瀬詩織の心情になんか陰が……。
それに少し変?
確かに、香織の言うとおり、詩織が声をかけた時は香織は泣いていなかった。

香織が泣いたのは、詩織の優しさに触れてからだ。



心の声を聞いたの……?



それは元からの片瀬詩織の能力?
それとも偶然?


とにかく、この時から香織の、詩織を見る目が変わったようだ。

香織にとって、詩織は掛けがえのない親友だと再認識したみたい。


そして記憶は中学3年生の時にジャンプする。
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