二重世界
右の扉を開ければ、幸せな未来が約束されているようなもの。


でも、左の扉を開ければ、暗闇の中を闇雲に歩き続けなければならない。



「お母さん、私……どうすれば良いの?」



私はそこに座り込んでしまった。ついさっきまで持っていた、強い決意がもう揺らいでいる。


私ってこんなに弱かったんだ……。
自然に涙がこぼれた。



「幸せな未来を目の前に突きつけられて、左の扉に手を伸ばせないよ……」



どれくらい座り込んでいただろう?とても長い時間が流れたような気がするし、まだ10分も経っていないような気もする。


ここでは時間の感覚がわからない。その事も、私の弱い心を多分に刺激した。



「良いかな……?私、生き返らなくても良いかな」



気付くと私は、右の扉の前に歩を進めていた。



「お母さんもお父さんも、きっとこっちで会えるよね?だって二人とも悪い行いをしてきてないもんね」
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