二重世界
香織の亡骸がある部屋の前には、泣き崩れたおばさん、歯を食い縛り悲しみに耐えるおじさんがいた。

あの姿を前にしたら、もはや言葉なんて吹っ飛んでしまう。


「あ、あの……」


私が声をかけると、2人ともこっちを振り向いた。
私は深々と頭を下げる。


「本当に……すみませんでした!私……、私が香織を……」


「詩織ちゃん、ごめんね」


おばさんが涙を拭いて声をかけてくれた。
でも、‘ごめんね'は私の方。


「そんな、何でおばさんが謝るんですか!?私が……」


「あの子ね、いつも言ってたのよ。自分が詩織ちゃんのヒーローなんだ、って。でも、ヒーローのくせに詩織ちゃんを辛い目に合わせて、香織の代わりにおばさんが謝らないとね」


「そんな……事……。悪いのは私なんです!私が香織を引き込んだから!泊まりに来させたから!」


「そんなに自分を責めないで。香織もそう言うわよ。ねえ、今度ウチにご飯食べに来てよ。いいでしょ、詩織ちゃん?」
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