二重世界
私達はそれから程なくして病院を後にした。
うっすらと空が明るくなっている。

私達は無言で歩いた。
数時間前は、香織も含めた3人で騒がしくこの道を歩いたのに、今は亮ちゃんと2人で、何も会話せずに下を向いて歩いている。

亮ちゃんと2人で歩くのは私の望みだったのに、今はそんな事考えられない。


香織……


あなたの存在がこんなに大きかったなんて。
私、耐えられないよ。

今日は日曜日。
学校もない。家で1人でいる事に耐えられないよ。
夜1人で寝る事が怖い。

藤瀬家を通り過ぎ、私達はそれぞれの家路に分かれる。


「藤堂くん、向こうでしょ?」


「お前を1人にさせられっか。危なっかしくてよ」


「え?で、でも……」


「べ、別に変な事しねえよ。お前が寝たら帰るからよ」


「う、うん。……ありがとう」


同じだ。
藤瀬ヒロミだった頃に、悪夢に苛まれていた私の傍にいてくれた時と。
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