二重世界
でも今の私は片瀬詩織だ。
その事実がもどかしく、少し妬ける。
亮ちゃんは私の部屋であぐらをかいて座る。なんか変な感じだ。

ヒロミとしての私は、亮ちゃんと親しいし、会話に困る事はなかったけど、片瀬詩織としての私はそんなに親しいわけじゃない。

どちらかと言うと、いつも香織が亮ちゃんに話しかけ、片瀬詩織は恥ずかしそうに会話におまけ程度に混ざってただけ。

こんな時、片瀬詩織だったら何を話すんだろう。


「横になってろよ。俺が適当に話してるからさ。子守唄代わりに聞いてりゃいい」


「藤堂くん、今日部活じゃないの?」


「お前が俺の心配すんじゃねえっての。ほら、早く寝ろよ」


「うん」


私は素直に、亮ちゃんの方を向いてベッドに横になった。
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