二重世界
「ん、ああ、おばさんと同じで‘亮ちゃん'て呼んでたよ」


「じゃあ私も、あなたの事………‘亮ちゃん'て呼んでもいい?」


私の精一杯の勇気。
またあなたの事を‘亮ちゃん'て呼びたい。
堂々と、気にせず、昔と同じ呼び方で。


「ああ。いいぜ……」


「もう眠れそう。一緒にいてくれてありがとう………‘亮ちゃん'」


「今日はゆっくり寝てろよ。また夕方に来るよ」


「うん。待ってる。おやすみ」


「おやすみ」


亮ちゃんはそう言って部屋を出た。
無意識じゃなく、意識的に‘亮ちゃん'て呼べて嬉しかったよ。

もしかしたらもう、‘亮ちゃん'て呼べないかもしれないから。

今日の午後も、会えないかもしれないから。
< 156 / 265 >

この作品をシェア

pagetop