二重世界
「ここは、道場!?」


いきなり景色が変わり、さっきまで部屋にいた私の体は、道場へと移動していた。


「あ、香織……!それから……あいつだ!」


左手を押さえている香織と、その前には顔がぼやけている男がいる。
間違いなく‘あの男'だ。

私は何も考えずに、男に突進した。

香織の回し蹴りが男の側頭部を捉え、男が香織の足を掴んだときだった。


ドンッ!


「ぬおっ!」


私は男に体当たりすると、2人とも吹っ飛び、道場に倒れ込んだ。


「ぐ……。あいつは!?何故ヤツが……!?」


「いたた……、誰?……詩織!?どうしてあんたが!」


「香織を助けに来たの!」


私は香織の手を引っ張り、道場の外へと走り出す。


「詩織、外には出られないの!見えない壁があって……、て、そこ、普通に壁よ!!」


「出られる!私達は出られる!」


私はふと、ある考えが浮かび、壁に向かって突っ込んだ。
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