二重世界
道場を出ると、そこは学校の敷地内だった。つまりあれは空手部の道場。


「ヤツは……来ない!?とにかく、広い場所に出よう。校庭がいいわ!」


私達は校庭に出て、四方を見渡し、あの男が来るのを警戒する。


「これは夢?だってあたし、確か詩織と一緒に寝てたはず……」


「夢だけど現実なの。実は私も昔、あの男に襲われた事があるのよ」


「さっきのヤツを知ってるの?あいつ、あたしに暗示をかけて詩織を殺させようとしたの」


「この世界は香織の夢の中よ。香織が目を覚ます事が出来れば、ここから抜けられるはず!」


そう。
ここは私の夢じゃない。
私の夢なら、多分自分の意志で目覚める事が出来る。

でも今は私の意志は関係ない。香織が現実世界で目覚めるまで、どこまでだって逃げてやる。
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