二重世界
「そんな事ないよ。ただ必死なだけ。だってここを脱出できないと香織が……」


「あたしが?」


「う、ううん、とにかく、香織はあいつの姿が見えないか警戒してて」


今はここで時間を稼ぎつつ、あの男を出し抜く方法も考えなくてはならない。

このまま香織が目を覚ます事が出来なければ、脱出方法はあいつを倒すしか選択肢がないかもしれないから。


ここは香織の夢の中。
過去に私の夢に現れた時も考えると、銃を使う場面はなかった。
直接触れないと殺す事が出来ないと考えて良い。

多分、他人の夢だから、何かしらの制限があるんだ。他人の夢だから、全てを思い通りに操作する事が出来ない。


だとしたら、もし格闘で自分より強い人間がいれば、殺す事が出来ないって事?

そう考えると、
あのお化け屋敷のヤツより全然大したことない能力だ。




……本当に?




でも私の時は、体が動かなかったりした事もある。
< 165 / 265 >

この作品をシェア

pagetop