二重世界
私は夢の中で、思い通りに動けなかったり、声を出せなかったりした。


あいつは夢の中の一部分を操作出来るはず。
でもさっき、校庭ではそんな事しなかった。


……どうして?


あの男が夢で現れたのは、トイレや教室、建物の一室、この前は電車。
さっきは道場……。

全て、外とは隔離された場所。


もしかして、私は思い違いをしていた!?

あの男は、どこでも夢の中の一部分を操作出来るのではなく、夢の中の‘箱の中'で能力を発揮出来るのでは!?

それも、箱が狭ければ狭い程思い通りに出来る。

ここは教室!
道場よりも遥かに狭い……


男の足音がゆっくりと近付いてくる。


「まずい!」


私は思い立ったように、突然、教室の両端にあるカーテンの片方を引きちぎった。そしてもう片方のカーテンと繋ぎ合わせる。


「詩織、どうしたの!?」
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