二重世界
手を離した時、一瞬宙に制止した私の体は、背中から落下し始めた。


「きゃああ!」


私、結局死ぬんだ……
亮ちゃん、お母さん、ごめん……


ガッ!!


私の背中に衝撃が走った。
しかしさほどの衝撃ではない。


「あれ?」


私の落下は2階で止まっていた。


「香織!」


「くうぅ……!」


香織が、半身を乗り出し、私を受け止めてくれたのだ。
そのまま2人とも外に投げ出されそうになるが、香織が窓の縁を蹴り、私達は教室の中に倒れ込んだ。


「香織、ありが……わっ!」


香織は息もする間もなく、私を横に転がし、再び窓に向かって走り出す。

私が振り返ると、あの男もカーテンを伝って窓に足をかけるところだった。


「さっきのお返しよ!!」


香織が全力で突進し、渾身の蹴りを放つ。


その蹴りは、空中でかわしようのない男の腹に突き刺さった。


「ぐはっ!!」
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