二重世界
しかし男は、カーテンを握った手を離さず、空中で制止した。




ブチィ!!




「何!?」


香織の蹴りで勢いの増した男の体重を支えきれず、カーテンがちぎれる。

そしてバランスを崩した男は、頭から真っ逆さまに落ちていく。


「くっ!仕方ない!」


落下音がしない。


「あいつ、落ちてないの……?」


私は恐る恐る外を見た。
すると、カーテンだけがヒラヒラと舞い、男の姿はない。


「まだどこかに!?……あ、何!?」


突如、私の視界がぼやけ始める。更に、私の体の感覚がどんどんなくなってくる。


「な、なんで!?あいつの仕業なの……!?あ、意識が……」


目の前が真っ暗になり、体はフワフワと宙に浮いたような感じになる。

次第に意識がはっきりし始め、気付くと私はうっすらと光の射す部屋の中で横たわっていた。


「ここは……?」


隣には香織が寝ている。
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