二重世界
「え?じゃあ……。香織、正気?」


香織の目は、いつもと同じように天真爛漫な輝きを見せている。


「何言ってるのよ!正気に決まってるじゃない!」


「香織……良かった……本当に良かっ………なんでキスするの?」


正気なのにキスしてくる、普通?


「だって、夢の中の詩織がさ、度胸あって、頼りになって……。あたしを助けてくれたお礼」


「あ、あはは……」


でもこれが香織だ。
香織が死んだあの未来はなくなった。
いや、パラレルワールドという考えに基づけば、あの未来はあれで進んでいくのだろう。

だけど、今私がいるのは、香織が存在している世界。私が望み、私が生み出した新しい世界だ。


本当に良かった。香織を救えて。



香織‘だけ'は救えて……
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