二重世界
「ごほっ、ゴホッ……ガハッ!!」


「詩織!!どうしたの詩織!?」


私は胸が締め付けられるように苦しくなり、大量に吐血した。


私にはなんとなく、こうなる事がわかっていた。

以前は、私の潜在意識で過去へ行き、結果的にアオを救った。あれはもしかしたら、必然の流れ、運命だったのかもしれない。


しかし今回は違う。
私の意志で過去へ行き、私の意志で未来を変えた。

本来生み出されるはずのない世界を、あるはずのなかったパラレルワールドを、たかが私ごときが創り出してしまったのだ。


必然の運命を歪めてしまった大罪。当然の神の裁き。


使ってはいけない能力を使用した罰が、私の体を蝕む。


前の世界で、病院を出た時から亮ちゃんは少し変わっていた。

きっと亮ちゃんは、自分の決断を信じ、藤瀬ヒロミを信じてくれたんだと思う。

でも今の世界では、その事実はないんだ。


私は‘私'の存在を誰にも気付かれる事なく、片瀬詩織として朽ちていくんだろう……


「詩織いぃぃ!!」
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