二重世界
警視庁・捜査一課――


「先輩、やはり片瀬詩織にはCRISのヤツらが関わっていました」


特殊捜査班の牧野が、先輩である坪倉に話しかけた。


「そうだろう?素人で気持ちが出やすい片瀬に、おとり捜査の依頼は無理だからな。お前に張り付かせておいてよかったよ」


詩織が警察署を訪れた日から、牧野は詩織を見張っていた。守っていた、という言い方が正しいかもしれない。


「CRISのメンバーが片瀬にドリームランドのお化け屋敷で接触。そのときは片瀬はどうやったか、難を逃れる事が出来ています。そして昨日、おそらくヤツらが接触したと見られます。そして現在、片瀬詩織は重体……」


「‘夢'のヤツか?」


「おそらく。あと1人、パラレルワールドのヤツも」


「牧野、お前、いくつの世界侵入を防げた?」


「5つです」


帽子のパラレルワールド侵入を妨害したのは、牧野であった。
牧野は‘二重世界の住人'だったのである。

しかし、帽子が言っていた‘被妨害数'と、牧野が今報告した‘防御数'は1つ異なる。

こんな事は、彼ら2人にも、CRISのメンバーにもわかるはずのない誤差であった。
< 181 / 265 >

この作品をシェア

pagetop