二重世界
「三輪!!」


亮二はすぐに病院に駆け付けた。
病室に入った亮二は、詩織に仰々しく取り付けられている機器を見て、あらためて詩織の深刻な容態を理解する。


「藤堂……、詩織に声を掛けて。掛け続けてやって」


詩織の心音を知らせる心電図は、ピコーン……ピコーン……と弱々しく脈打っている。


「片瀬!!頑張れよ!戻って来いよ!」


心電図のリズムは相変わらずだ。香織も亮二も、しばらく詩織に声をかけていた。


「くそっ!せっかく……、そうだ!三輪、お前諦めず声を掛けてろよ!」


「どこ行くの藤堂!?」


「すぐに戻る!」


亮二は急いで、ある場所に電話をかけた。
そしてすぐに病室に戻る。

しばらくすると、病室にもう1人、詩織のために駆け付けた女性が来る。


「おばさん!」


「亮ちゃん!……詩織ちゃん、どうして?」


藤瀬ヒロミの母親、藤瀬佐和子である。亮二が電話で呼び出したのは彼女であった。


「おばさん、俺達と一緒にこいつに呼び掛けてやってくれ!」


「藤堂、誰、この人?」


「あ、ああ、片瀬の近所の人だ。片瀬の……親代わりみてえなもんだ」
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